2017-09-18

【コラム】なぜ事業承継の早期対策が必要なのか?5つの理由

事業承継・・。
自分が引退して他人に事業を譲ること。
長年必死で育ててきた会社を他者に譲り、自分はその場から離れるということはあまり考えたくないかもしれません。

 

「自分はまだまだやれる」という自信と、「そろそろ身を引く時期かも」という不安の狭間で心が揺れ動き、月日だけが経過していく。
それが、中小企業における事業承継の実態だと思います。

 

しかし、そうして事業承継の準備を先延ばしにすればするほど、事業承継の実現が困難になります。
・継いでくれる後継者が見つからずに廃業した。
・経営者としてのスキル不足で後継者が承継した後、急速に業績低下した。
・自社株を後継者に移転しようにも株価が高くなりすぎて、買取り資金が用意できない。
・税金対策をしていなかったので、相続税、贈与税が払えない。
・経営者が病に倒れて、事業運営が困難になった。
といった事例は、後を絶ちません。

 

事業承継の準備を怠ってしまったばかりに、自分や社員、その家族、取引先等の人々が不幸になってしまうのは、どんな経営者でも望んでないことでしょう。
「事業承継は通常、その準備に5年~10年は要するものです」と伝えると、多くの経営者は「そんなにかかるものなんですか?」という反応を示します。
円満な事業承継を実現するために、なぜ対策を急がなければならないのでしょうか?

 

【理由1】後継者の選定には時間がかかるから

 

安心して経営を任せられる後継者を見つけるには長い時間を要します。後継者を決定するまでには

 

(1)後継者として相応しい候補者を探す
(2)後継者自身に承継の意思表示を確認する。
(3)経営者スキルを習得してもらうための後継者教育を実施する。
(4)経営者と後継者間で、最終的な合意形成を行う。

 

といったステップを踏みます。いずれもじっくり取り組むべきもので、計画的な実施を要します。

 

【理由2】自社株式の移転には時間がかかるから

 

中小企業の株式名簿を確認すると、経営者以外にも多くの株主がいる場合があります。

株主には経営の意思決定に関与する権利を有しているので、株主が分散したまま事業承継を実行すると、後々、経営方針や活動に対して様々な形で反対意見を言ってきたり、権利を行使したりして経営を不安定なものにされることがあります。

 

また、現在の株主に相続が発生するとその子供が新たな株主となってより一層株主の分散化が進む可能性があります。

さらに名義株の問題も実質的な株主は誰なのか?という争いに発展することもあります。

 

こうした様々なリスクを減らすため、経営者または後継者への株式の集約化を進めるのですが、適正な株式評価額をめぐる争いや、買い取り資金の問題、株式売買や贈与時の税負担の問題が生じることが多々あります。

株式の移転についても時間をかけてじっくり取り組む必要があります。

 

【理由3】財務体質の改善には時間がかかるから

 

後継者が決まっていて、株式の問題もない、という場合でも、財務内容が悪い原因で事業承継が進まないケースもあります。

赤字決算が続き今後の事業の見通しも暗いと、後継者は承継することを躊躇します。

 

黒字決算であっても借入金の負担が大きいと個人保証の引き継ぎや個人資産の担保差し入れについて、不安に感じるのは当然のことと言えます。

経営者も財務内容の悪い会社を後継者に承継させることに申し訳なさを感じ、事業承継の話すらできないこともあります。

 

こうした会社の事業承継は、基本的にはまず、経営改善策を立案、実行して黒字決算を実現し、借入金の圧縮に努める必要があります。経営改善も一朝一夕にはできるものではないので、中長期的な検討が必要となります。

 

【理由4】関係者の承認を得るには時間がかかるから

 

事業承継は経営者と後継者が合意しさえすれば上手くいくというものではありません。

例えば経営者が所有する土地や建物を会社に貸している場合、経営者が亡くなって相続人がそれらの不動産を相続すると、これまでのように会社が使用できなくなることも考えられます。

また、後継者が新しい経営者になることを社員や金融機関が拒むケースもあります。

 

事業承継では経営者の親族、社員、金融機関とも事前に協議するなどして、承継の承認を得て、承継後の協力を約束していただくことが大切です。

 

【理由5】高齢になるにつれ体力・気力が衰えてくるから

 

どんなに元気な経営者であっても、年齢と共に体力や気力が衰えていきます。

体力・気力の衰えは事業承継対策に積極的に取り組むことが難しくさせ、人によっては「なるようになる」と開き直り、後継者や周囲の人たちを苛立たせます。特に認知症の症状が現れると事業承継の実現が非常に難しくなります。

 

また高齢経営者は、そうした理由とは別に、事業承継するための心の整理にも多くの時間を要する傾向にあります。会社、後継者、自分、社員、その他の関係者、それぞれの立場で物事を考え、全体を俯瞰して事業承継の実行計画を策定するには、心身ともに元気なうちに行う方が望ましいと言えるでしょう。

 

 

経営者は、いつかは必ず身を引く時期がきます。まずはそのことを清く受け入れ、自分や周りの全ての人々が幸せになる事業承継とはどのようなものか?

そのためには今、何をしなければならないか?じっくり考えてみてはいかがでしょうか?

一人で考えても考えがまとまらないときは、お気軽に増子までご相談ください。

 

― 増子慶久 ―

 

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