自社の事業承継、意識してますか?
経営者にとって事業承継は一世一代の大仕事。「準備が大切!」とよく言われるけど、何となく後回しにしてしまう方も多いのではないでしょうか?そんな事業承継についてのイメージを明確にしていただき、初めの一歩を踏み出せるよう、今回から3回シリーズでコラムをお届けします。
1.事業承継、成功と失敗の分かれ目
以前お会いしたお二人の社長。どちらの社長も当時60代半ばでした。
A社長「うちは業績好調だから、問題なく息子(後継者)が継いでくれると思うよ」
B社長「今期は赤字決算。こんな状態で娘(後継者)に継がせるのは申し訳ない」
それから5年後の現在、どちらの社長が事業承継を円滑に進めることができたでしょうか?
・・・
答えはB社長です。
B社長の会社は既に代表者交代を済ませて後継者が経営に従事していました。一方、A社長の会社は後継者が承継することを拒んで会社を去ってしまったのです。
なぜB社長が上手くいって、A社長が上手いかなかったのか?
成功と失敗の分かれ目は、「事業承継について早期に意識すること」にあります。
「事業承継」という言葉はあちこちでよく聞く言葉ですが、「事業承継とは何か?」明確に答えられる人は多くありません。でも曖昧なままでは意識も曖昧、行動にもつながらず月日が経過するばかりで承継できず、となってしまいます。
2.事業承継に対する思い込みと不安
先程のA社長は事業承継を意識していたとは言い難く、後継者育成やコミュニケーションをとることを怠ってしまったため、後継者は「当社を率いていく自信がない、他にやりたいことがある」と言って当社を去ってしまいました。
一方B社長は、後継者の立場で経営を引き継ぎやすい状況を作るため、後継者と共に経営改善の取組を行い、後継者の納得感を得て事業承継を実現させることができました。早くから事業承継を意識して、自身の中で承継のイメージを持つようにしていたことが、このような結果をもたらしたのです。
A社長のように事業承継を意識しようとしない原因は、思い込みや、不安にあるように思います。
「事業承継は、その時が来れば何とかなる」という思い込みは危険です。先延ばしにするほど質・量の両面で打てる対策が少なくなっていくからです。
また「事業承継なんて無理」という不安を抱える必要もありません。時間をかけてしっかり準備すれば大抵はうまくいくものです。
「(準備しないと)何とかならないのが事業承継」であると同時に、「(しっかり準備すれば)何とかなるのが事業承継」です。
まずは「事業承継とは何か?」、改めて考えてみましょう。
3.事業承継とは?
事業承継に対する思い込みや不安を抱えている社長には、まず「事業承継とは何か?」その意義を明確にすることをお勧めします。
事業承継という言葉を分解すると「事業を承って継ぐ」となります。従って、「自社の事業とは何か?明確にしたうえで、それを後継者に伝え、後継者が自分の力で事業を継続させることができる、と思ってもらえるような取り組み」が事業承継となります。
後継者が引き継ぎやすい環境を整備することが経営者の務めです。具体的には、自社の現状分析、課題の整理、経営理念や方針の共有、収益力向上、負債の圧縮、人材・組織の最適化、労働環境の整備、技術・ノウハウ・情報の整理及び可視化、社外ネットワークの構築、税金対策、後継者育成、株式集約化、円満相続、社内外関係者の理解といった取り組みなど、多岐にわたるため優先順位を持って計画的に取り組むことが求められます。
4.早期着手が事業承継の肝!
事業承継は単なる代表者交代がゴールではありません。承継後も安定的な利益を出せる状態にすることがゴールです。そうしたゴールを見据えた取組を早期に行わないと、以下のようなリスクが顕在化してしまうことがあります。
>こうしたリスクを回避するためには、「3」で記載したような非常に多くの取り組みを事前に行わなければなりません。これらの取り組みが完了するまで通常は10年以上を要すると言われています。従って先送りするほど、経営者が高齢となり生前に取れる対策が少なくなってしまうため、できるだけ早期に着手することが重要です。事業承継の第一歩は「事業承継を意識すること」、そしてその次は「早期着手」が肝となります。
■事業承継対策実施のポイント
それでは実際にどのような点に着目して事業承継対策に取り組むのか、下図にそのポイントをまとめてみました。
これら5つのポイント全てが重要ですが、実際に進めようとするとき、それらを阻む障害があることに気付かされます。予めその障害を知っておくと準備を進めやすくなります。次回のコラムでは「事業承継を阻む7つの障害」「事業承継実現までのプロセス」「魅力ある会社づくり」等について説明させていただきます。
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